なにやら反響が大きいので
クリエーターになるためには他人の書いたものを素直に楽しむ心を持ちましょう、みたいなことを書いたところ、ものすごくアクセスが入ってびっくりです。
ネット社会では、もはやそんな当たり前の受けてとしての姿勢が、当たり前ではなくなってきているのかもしれませんね。
ちょっと気がかりです。
まあしかし、大多数の日本人というか地球人は、今でも昔通りに普通に好きな本を買って楽しみ、好きな映画やテレビを楽しんでいることでしょう。もちろん、漫画やゲームも同様です。人間にとっての『面白さ』というのは、古今東西、基本の部分ではそんなに大きく変わっていないはずです。
だから、売れているものには、やはり売れるなりの面白さがあります。売れてるって聞いたから買ってみたのに、全然じゃん、という場合は、自分がその作品の支持層に当たらないために、面白さを感じられないだけのことです。
さて、それじゃあ『面白さ』って何? 誰にとっての面白さを目指せばいいの?
そんな疑問が、湧いてきます。これは難題です。
100万部も出ているのに、読んだ人が誰一人面白かったと言わない漫画なんて、聞いたことないですよね。でも、100万部売れてるからといって、読んだ全員が面白いという作品もまた存在しない。
そういう現実を前にして、プロの作家というのは、「さて、じゃあ自分はどんなものを書けば売れるのだろう」、と考えるわけです。
いや、売れないでもいいんだ自分は好きなものを書くから、というプロもいますし、そういう考え方を否定するわけではないのですが、そんな人でも本当は自分の作品をたくさんの人たちに読んでほしい観てほしいと思ってはいるはずです。
売れる作品、たくさんの読者や視聴者に支持される作品。
自分でもそういうものが創りたい。
でも、最大公約数のようなものを創っても売れるわけではない。
かといって、読んだことも観たことも聞いたこともないような奇妙キテレツな作品は、やっぱり売れません。
う〜ん。困った。なにを創ればいいんだ。
そういう時に、なにをするのがいいと思いますか?
一番いい方法は、「過去に自分が読んで面白くて夢中になったもの」を思い出すことだと私は考えています。そして、その「夢中になった理由」を考えて、自分の作品に『感覚として』反映させていくんです。それが、突破口になる秘策だと、私は思っています。
不特定多数の読者にとって面白いものを目指すというのは、避けたほうがいい。よほどのリサーチ力と分析力がないと、うまくいきません。やはり「自分にとって面白かった」もののほうが、理解もしやすいし表現もしやすいんです。
間違えないでくださいね。「自分が書きたいものを書く」のではなく「かつて自分が読んで夢中になった誰かの作品の面白さを分析して、自分の作品に反映させる」ということですから。これは、秘中の秘です。このブログを読まれたあなたは、ラッキーかもしれません。
そういうわけだから、優れたクリエーターとなるには、この「面白かった」体験がなるべく多く必要なんです。その引き出しにたくさんのアイテムが入っている人のほうが、成功もするしその成功が長続きもするように思います。
私が思うに、若いうちに『面白かった体験』をなるべくたくさん積む。そして、その面白さを具体的に分析して表現する習慣をつける。それがクリエーターへの第一歩です。
簡単なようで、案外難しいんです、これが。
他人の作品を面白がる、というのは、何でも喜べという意味ではないですよ。てゆーか、そんなことって人間できないでしょう。全然面白くないものを本気で面白がることができる人なんて、いやしません。だから、純粋に楽しむことが欠点に気づかない鈍感さにつながる心配なんかないと思ってください。欠点を探すほうが、遥かに簡単です。探そうと思えば誰でもすぐに探せます。どんな完成度の高い作品でも、掘れば欠点はゾロゾロでてきて、そんな作業をしているうちに、この作品、本当に面白かったのかなぁ、なんて疑問まで湧いてきますよ(笑)。だから欠点さがしなんかヤメといたほうがいい。そんなの、プロになってから自分の作品の校了の時にでも、えいっ、と思い立てばすぐにできますから。くり返しますが、クリエーター(あるいはそれを目指す人間)に必要なのは、「面白さを探し、具体的に形にして把握すること」なんです。そして、これが一番難しい。
たとえばですね、編集のキバヤシ氏が昔よく、新人編集者にこんなことをさせていました。
新人編集者に、最初に漫画の絵コンテ、つまりネームというものを読ませて、さあ、どうだった? ときくと、最初の答えは作家とか先輩の目を怖がりつつ「面白かったです」と返ってくることが大半です。
それじゃダメでしょ、なにか意見はないの? とさらに問い詰める。すると、焦りを顔に浮かべてまたパラパラと絵コンテをめくって、「えーと、ここがイマイチです。ここもなんか分かりにくいですね。ここが、ここが……」と今度は欠点をあげ連ねる。
するとイジワルな先輩たちは、「ふーん。悪いところはわかったから、良かったところは? 面白かったところはどこ? どう面白かったの?」
「えっ? それはその……」
たいがい、ここで詰まってしまう。最初に面白かったと言ってるのに、意見を言えと要求されると、悪いとこをまず見つけてくる。そして、面白かったはずなのに、どこがどう面白かったのかは、なかなか具体的に表現できないんです。
わかりますか?
他人の作品の面白さを見つけ出し、表現して、さらにこうすればもっと面白くなるかもしれない、と発展させていくことが、『売れる』クリエーターになるための一番の近道なんです。逆に、ここがダメなんだよ、ここがつまらないよなぁ、とケチばかりつけていては、どんどん迷路に入っていって、永久に目的地に到達できないかも知れません。
おや? いつのまにかこんなに長文を(笑)。
いけないいけない。仕事にもどります。
では、また。
さて、10月17日、『探偵学園Q』最終巻が発売になりました。
コミックス派のみなさん、最終回の感想もぜひ、メールでくださいね。
悲しいけれど、未来への希望に満ちたラストだと自負しています。
購入はこちらからどうぞ↓
- 作者: さとうふみや,天樹征丸
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/10/17
- メディア: コミック
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また、同時に発売になった、探偵学園Q THE LAST MYSTERY
のことはご存じですか?
私が信頼しているライターの方が気合をいれてまとめてくれた、素晴らしいネタ本です。
このシリーズはだいたい読んで損のない出来ですが、『Q』については最後ということで、私もいろんな裏話を語り尽くしております。
ご期待ください。
カバーは↓
購入は↓からどうぞ。
探偵学園Q(キュウ) the last mystery (KCデラックス)
- 作者: 天樹征丸,さとうふみや
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おっと忘れてた。新装版のノベルス『鬼火島殺人事件』も発売中です!
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- 作者: 天樹征丸
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『ゲンジ物語』パソコン配信が開始されています。携帯配信では第二話も、講読開始になってます。
第二話はちょっと本格仕立てです。トリッキーなストーリーですので、第一回配信分から『伏線』なんかが用意されてたりもします。気をつけて読んでください。
『ゲンジ物語』
第一話 〜蝶の葬送〜
第二話 〜死神の接吻(くちづけ)〜
携帯&PCにて配信中
上記URL↑または、携帯のメニューからもアクセスできます。詳しくはこの後に↓
約1ヶ月分の1エピソードが300円で購入できます。本屋さんにいくバス代往復くらいかな? 携帯の場合は一週間に一回、毎週木曜の配信で、4回〜5回で1エピソードが終了、そしてこの先も読みたいと思っていただけた場合は、最後の回の配信時点で次のエピソードの第1回を購入できるようにしました。10月6日より開始されたPC配信は、1エピソードを月イチで丸ごと一回で購入できます。
また第一話(4回分)を購入された方は、特別付録として『金田一少年の事件簿 〜オペラ座館・第三の殺人〜』の第一話シナリオを読んでいただくことができるようになっています。門外不出の漫画シナリオです。ここでしか絶対に読めません。どうやって漫画ができているのか、漫画のシナリオって、どんなだろう、なんて興味で読まれるのもアリですが、もしかするとシナリオならではの描写の中に、今回の謎のヒントにつながる部分があるかもしれませんよ。もちろん、なにげない記述をヒントに結びつけることができるか否かもみなさんの推理力次第です。どうぞ、こちらもお楽しみに。
第二話には、田島昭宇先生のクールなイメージイラストの待ち受けかPCの場合は壁紙が付録でついてきます。
★携帯のメニューから購入画面にアクセスする場合
【NTT DoCoMo店】
メニューリスト→TV/ラジオ/雑誌/小説→小説/コミック→電子書店パピレス
【KDDI店】
トップメニュー→カテゴリで探す→電子書籍→総合→電子書店パピレスDX
【Vodafone店】
メニューリスト→TV/ラジオ/雑誌→電子書籍→電子書店パピレス
日経新聞↓
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=109727&lindID=1
毎日新聞↓
http://www.mangatown.mainichi.jp/portal/press/0119/02/
金田一少年の事件簿 吸血鬼伝説殺人事件 (講談社コミックス)
- 作者: さとうふみや,天樹征丸
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/12/17
- メディア: コミック
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『オペラ座館三部作』の二作目、『オペラ座館・新たなる殺人』の新装版ノベルスも、発売になってます。
新装版 金田一少年の事件簿 オペラ座館・新たなる殺人 (Magazine Novels)
- 作者: 天樹征丸,さとうふみや
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/09/15
- メディア: コミック
- クリック: 3回
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サイコバスターズ↓完結第3巻(最新刊)発売中! ↓をクリックで買えます!
サイコバスターズ(3) (YA! ENTERTAINMENT)
- 作者: 青樹佑夜,綾峰欄人
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/09/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- クリック: 21回
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謎のリンク(ともかく訪ねてみよう)
http://d.hatena.ne.jp/sijimi217/
http://blog.goo.ne.jp/toofu001
http://d.hatena.ne.jp/agitadashi/
★読者のみなさんからのメール、お待ちしています。『金田一少年』『探偵学園Q』『ゲンジ物語』などの感想もぜひ!
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でも、ぜったいに読んでいます。それはお約束できます。
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