どうなる、『上海魚人伝説』


さて、金田一少年、初の実写映画化の運命やいかに?


突然にふってわいた、トラブル。
殺人事件の起こらない金田一少年なんか、クリープを入れないコーヒー(古い)みたいなもんです。
到底、承服できる話ではありません。
それに、ここで折れても、向こうはまたなにをいってくるかわからない。
当時の中国政府というのは、少なくとも私の印象では、悪しき官僚主義の権化としか思えなかったので、その無理難題を克服して撮影に持ち込むのは、ほとんど不可能なような気がしました。
私は、Hプロデューサーに言いました。
「上海は諦めよう。もう一度ロケハンにいって、台湾や香港を回ってみたらどうだろう。どっちも中国には違いないし、大きな印象は変わらないものになるんじゃないかな?」
もちろん、現実には違います。なんといっても、あの大陸の雄大さは、台湾や香港にはない魅力です。すでに書き始めていた私の小説も、設定を上海から移すとなると印象は違ってしまう。正直、上海を舞台にするほど面白いものになるとは思えなかった。
「最悪、それも視野にいれるよ」
Hプロデューサーは、動揺をあらわにして言いました。
「でも、もう一度トライしてみる。上海に飛んで、腹をわって、向こうの頭の固い官僚に談判してみるよ」
彼女は、その言葉通り、数日後に上海に飛んだのです。
果たして、その結果は……。


     (つづく)


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金田一少年の事件簿 上海魚人伝説殺人事件   マガジンノベルス

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