上海魚人伝説、裏話


昨日の続きです。トラブルの連続、なんて大げさにあおってみましたが、私の面したトラブルは全然たいしたことじゃありません。
でも、いちおう書いておこうかな。


さて、前回に書いたようなワケで、締め切りまでたしか2週間かそこらでのプロット執筆とあいなりました。
小説本体はもう少し先だから、まあなんとなるだろうと思って引き受けたのですが、
ミステリーとなると、トリックもありますし、動機その他、ラストまでおおよその展開ができていないと、たいへんなことになります。
夜もオチオチ寝ていられない日々がつづきました……というのはウソで、私はこういう時、あまり深く考えずになんとなくいろんな設定や意外性などを考えながら、締め切りが近づいてくるのを待つことにしています。(今も基本は同じです)
だって、当時はあのタイトな金田一少年の漫画の原作もありましたから、そんなことで慌てていたら、身が持ちません。(ここだけの話、他にもいろいろありましたしね)
で、締め切りが目の前になると、さすがにヤバい、となるわけですが、そうなるとどこかから突然降ってくるんです。ストーリー全体の構想が。
このときも、そこまではうまくいきました。
新聞だったか雑誌だったかで、アジア系の自動車泥棒の話を読んだ時、ハッと思いついた構想が、あの小説の元ネタです。
執筆が開始されました。
そして、いよいよHさんが上海に発つギリギリの締め切り。
なんとか筆ものりはじめ、そう、夜の12時前後だったかなぁ。
よかった、これでなんとか間に合う、と思ったそのときです。
フッ……とワープロ(当時はそうでした)の電源が飛んで、画面が真っ暗に。
「あっ!」と思った時には後の祭り。完成間近だった原稿が、3分の2ほどもブッとんで消えてしまったのです。
もう、全身脱力です。
10時間くらいかけて書いていたものが、ゼロですから。
そして、明日がデッドライン。もう、Hさんには「なんとか間に合いそうだ」なんて能天気なことを伝えてしまっていたこともあり、焦るの何の。
さあ、どうする? 事情を伝えて、なんとか対応してもらうしかないか。
……いや、それはできない。
3分、メゲてうなだれました。
それから10分。どうするか考え……時計をみて、また考え、なんとか文書を復活できないものかとマニュアルを読んで、ダメだと分かり……。うんざりすること、さらに5分。
やがて私の中に、こんな言葉が。
「書き直したら、もっと面白くなるかもしれないじゃん」
そう思った瞬間、なんかフツフツとやる気が沸くというか復活してきて、私は再びワープロに向かうことができたのです。
なんて能天気なアホウだと思われるかもしれませんが、もしこの日記を読まれている中に、作家なりクリエーターなりを目指している方がおられたら、こうやって切り換えて次に進んでみてください。
失敗した、新人賞に落ちた、編集者にボロクソに言われて書き直しを命じられた、そんなときにこの言葉は、とてもいいカンフル剤になってくれます。
「書き直したら、もっと面白くなるかも」
いかがですか?

さて、私のささやかなトラブルはこれくらいにして、映画『上海魚人伝説』のプロデューサーHさんを襲った、最悪のトラブルにつづきます。



金田一少年の事件簿 上海魚人伝説殺人事件   マガジンノベルス

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